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快眠コラム

睡眠と高血圧の深い関わり 後編

睡眠と病気
福間 長知
日本医科大学付属病院循環器内科
福間 長知

前回のおさらい
高血圧には様々な種類があり、一日の中でどのように変動するかで分類されます。夜間高血圧、早朝高血圧、昼間高血圧などがありますが、これまでの研究から夜間高血圧が最も危険であると知られています。

夜間の高血圧と睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、夜間・早朝の高血圧の原因になります。睡眠時無呼吸症候群は気道の閉塞を伴うものと伴わないものがありますが、高血圧で特に問題となるのは、気道の閉塞を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。新幹線運転手が睡眠時無呼吸発作のために深い眠りが得られず、昼間の運転中に寝てしまい、新幹線が緊急停止したニュースなどでご存じの方も少なくないと思います。

睡眠時無呼吸症候群の人は、寝ている間に呼吸が出来なくなるので相当苦しいはずなのですが、発作時には眠りが浅くなるだけで完全に目が覚めることは多くありません。この無意識のうちの窒息のような状態が、夜間・早朝の高血圧の原因となります。この過程は複雑で、無呼吸発作が体の働きのいろいろなところに影響を与え、血圧を上げるわけです。そのため呼吸が止まる夜だけでなく、昼間の血圧も高くなることも少なくありません。

夜間や朝方の血圧が高い人や降圧薬が効きにくい高血圧の人は、家の人に寝ている時のいびきや呼吸停止を聞いてみて下さい。いびきや呼吸停止がある場合、高血圧の治療として睡眠時無呼吸症候群の治療を考える必要があります。

夜間高血圧の治療

夜寝ている間の高血圧や早朝高血圧の原因には様々なものがあり、その原因にあった治療をすることが大切です。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群が原因であれば、持続陽圧呼吸(CPAP)が一般的な治療法で、高血圧の改善が期待できます。CPAP用のマスクをして寝ると、マスクから持続的に空気圧(陽圧)がかかり、気道が閉塞し難くなることから、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療に広く使用されています。適応があれば患者様にCPAPの機器を貸し出して、自宅でCPAP治療をすることになります。

その他に夜間高血圧の原因として塩分の摂り過ぎや、塩分が身体から充分に排泄されないことがあります。その場合、塩分を制限するための生活習慣改善や、塩分を尿から排泄させる利尿薬の投与が行われます。このような塩分が体に溜まらないようにする治療は、結果として気道のむくみを軽くしますので、閉塞性睡眠時無呼吸症候群も軽くなることが期待できます。健康であれば、体内の塩分は昼間に調節されますが、上手く調節できなくなると夜間高血圧などの病気が起こると考えられています。

日本高血圧学会は、診察室で測る血圧より家庭で測る血圧が大切であると発表しています。高血圧の治療を受けている方もそうでない方も、家庭血圧を測ってみて下さい。そして夜間や早朝の血圧が高かったら、睡眠時無呼吸症候群を疑ってみましょう。薬でない治療がより適切であるかも知れません。

最後に

寝ている夜に血圧を測ることは難しいので、実際には早朝血圧が夜間血圧の代用となっています。自主的に家庭血圧、特に朝起きてから1時間以内(排尿後・服薬前・朝食前)の血圧を測定してみてください。家庭血圧計は、もはや体温計などと一緒で、家族の健康管理の必需品です。

もし夜の血圧が高ければ、病気が隠れているかもしれないと疑ってください。その一つが睡眠時無呼吸症候群です。家族に指摘されるいびきや呼吸停止だけでなく、治療に抵抗する高血圧や、夜間に発症した脳・心臓・大動脈疾患も、睡眠時無呼吸症候群を疑うきっかけになります。日本人は解剖学的な特徴から睡眠時無呼吸を起こし易く、肥満がない人にも発症します。予想以上に高頻度なので、注意が必要です。

病院・診療所での診察は昼間。しかし危ない高血圧は寝ている時のもの。健康管理のためには昼間だけではなく、夜間の血圧にも注意しましょう。