セルフチェック
気になる症状があればセルフチェックをしてみましょう。
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める……、こうした睡眠の悩みは、“環境”に問題があることも少なくありません。心地よい入眠とすっきりとした目覚めのために、寝室環境の騒音、光、温度の3要素が重要で、とくに寝室の温度と湿度設定、寝具などの選び方も重要になります。
夏はいざベッドに入っても暑さや汗による不快感でなかなか寝つけない、冬は寒さで身体が冷えて寝つけない……、そんな経験がある人も多いのではないでしょうか。眠りの環境が悪いと、寝つきが悪くなって睡眠時間は短くなる、夜中に目が覚めてしまうなど、睡眠の質・量ともに低下してしまいます。慢性的な睡眠不足となるだけでなく、眠りが浅くなって疲労が残ったりすることもあります。
●寝入るときに身体に起きていること
質の高い睡眠をとるうえで重要なキーワードとなるのが「深部体温」です。人の体温は1日のなかで変動しており、このうち深部体温が下がるときに眠気が起こりやすくなります。では、深部体温が下がるとき、身体ではどのようなことが起こるのでしょうか。
赤ん坊が睡眠に入ろうとするとき、手足の皮膚の温度は上昇してポカポカと温かく感じられます。これは、皮膚の表面近くを流れる血管に多くの血液が流れて身体のなかの熱を放散しようとする働きによるもので、熱が放散されることで身体の深部体温は下がり、心地よく入眠ができるのです。
しかし、冷え性で季節を問わず手足が冷えている人は、熱が逃げにくく、寝つくまでに時間がかかってしまうと考えられます。また、寝室の気温が高すぎる場合、湿度が高すぎる環境では皮膚から熱が放散されにくいため、寝つきが悪くなってしまいます。
●寝つきをよくする寝室の温度
寝つきをよくするためには、就寝前に体温が高い状態をつくり、寝室の温度は高すぎないようにすることを心がけます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、夏の寝室はエアコンをつけて涼しく保つこと、冬は就寝前にできるだけ温かい部屋で過ごすなどの工夫が重要であるとしています。
夏:冬に比べて寝具での温度調節が難しいため、より室温に注意する必要があります。寝室の室温が上昇することで睡眠時間が短縮し、睡眠効率が低下することが報告されているため、夏の寝室ではエアコンを使いましょう。寝室の温度が高すぎると寝ている間にも大量に汗をかき、脱水を起こして熱中症のリスクが高くなります。
冬:寝室の温度が低下しても寝具を重ねて使うなどの工夫をすることで寝床内の温度は維持しやすいといえます。ただし、夜間にトイレに行く場合や起床時に室内が寒いと血圧が急上昇するリスクがあるため、注意が必要です。WHO(世界保健機関)では、冬の室温を18℃以上にすることを推奨しています。部屋を移動しても急激な温度の変化が生じないように工夫しましょう。
近年では湿度計を設置する家庭もありますが、温度に比べるとこまめにチェックする習慣がないのが湿度です。しかし、室温が許容範囲内でも湿度が高すぎることで、深い睡眠が減ることがわかっており、睡眠の質が低下します。また極端な場合は、熱放散が妨げられることによる熱中症リスクを高めます。
寝室の湿度が高いときにはエアコンの除湿機能や除湿器を使います。ただし、家庭用の除湿器を使うことで室温が上昇することがあるため、温度と湿度の両方を確認する必要があります。
一方で湿度を下げすぎると、鼻やのどが乾燥するなどして睡眠を妨げる可能性があります。とくに乾燥する冬場は加湿器を使って寝室の湿度を40~60%に保ちましょう。
寝室の温度や湿度に問題がないにもかかわらず寝衣が濡れて不快なほどの寝汗をかく場合には、病気が隠れている可能性があります。睡眠外来やかかりつけ医に相談しましょう。
室内の温度は、温度計の置き場所やベッドの位置によっても変わることがあります。室温だけではなく、寝床内の温度にも注意しましょう。寝床の身体付近の温度が33℃前後になるように冷暖房で室温を調整すると、自然と眠りに入りやすくなります。寝床内温度の調整には、寝具選びも重要です。夜間に暑さで掛け布団をはねてしまったり、寒さで目が覚めたりしないように、外気温や室温に応じて変えましょう。
<参考資料>
・厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001254003.pdf
・Housing and Health Guidelines. World Health Organization. 2018.
https://www.who.int/publications/i/item/9789241550376
・Okamoto-Mizuno K, Tsuzuki K. Effects of season on sleep and skin temperature in the elderly. Int J Biometeorology. 54: 401-409, 2010.
https://link.springer.com/article/10.1007/s00484-009-0291-7
・内山真・降籏隆二:ヒトの体温調節と睡眠.日温気物医誌,78(1):6-9,2014.https://www.jstage.jst.go.jp/article/onki/78/1/78_6/_pdf